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スクリーンで旅するアメリカ

岩本裕子 著

book 映画を案内役に、全米50州の歴史と文化を四季ごとに巡る旅。人や街、アメリカという国に、知られざるエピソードが盛り沢山。あなたのお気に入りの映画にも、気づかなかった事実が隠されているかも。
今までと違う映画の見方や楽しみ方を見つけるために。本を片手にアメリカを旅する、など違った角度からも楽しめる1冊。さあ、グレイハウンドの旅に!

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初版1998年1月20日 ISBN4-944098-19-7 C0074
A5判/224ページ●定価1,620円(税込)

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contents

第1部春 建国の歴史ゆかりの東海岸から始めよう
 ヴァジニア州、イギリス人最初の植民地
 マサチューセッツ州、巡礼始祖の到着地
 ニューヨーク州、始まりはオランダ人の植民地
 ワシントンDC、さまよえる首都物語の終結
 ペンシルベニア州、宗教に寛容な「ペンの森」の精神
 <春・コラム>
第2部夏 不可思議な南部からルート66で西部へ走ろう
 深南部、南部色の濃い複雑な地域
 周辺南部、南部らしさと懐かしい歌
 ニューオーリンズからシカゴまで、ミシシッピ河を北上してジャズの旅
 オクラホマ州とアリゾナ州、逃亡者の道「ルート66」
 ニューメキシコ州、「マンハッタン計画」の遂行地
 <夏・コラム>
第3部秋 収穫の季節に豊かな州をまわろう
 カリフォルニア州、様々な人生の実験場
 ハリウッド、映画の都の光と影
 テキサス州とフロリダ州、サンベルト地帯の豊かな二州
 砂漠州と山岳州、カジノの砂漠と先住民の居留地
 大平原州から五大湖周辺州へ、グレート・プレーンズとハートランド
 <秋・コラム>
第4部冬 雪景色が似合う諸州で旅を終えよう
 大西洋岸の六州、ニューイングランド地方
 大平洋岸の三州、日本に一番近い州はどこか
 ハワイ州、王国から五十番目の州へ
 ニューヨーク、クリスマスの似合う街
 ワシントンDC、戦争というキーワードで首都をめぐる
 <冬・コラム>
あとがき
参考文献一覧/映画タイトル索引/州名別索引

lookingin

illust レーバー・デー<Labor Day>
九月第一月曜日に設定されている連邦祝日、レーバー・デーは、労働者の日と訳せばよいのだろうか。当日は、連邦祝日恒例のパレードもあるが、週末から続けて三連休となるために、夏休み最後の連休として、本来の意味を深く考える機会も少ないようだ。56頁でもふれたが、メグ・ライアン主演の映画『めぐり逢えたら』の一場面に登場する掲示板に書かれているように、レーバー・デーがくると夏が終わり、海の家も閉じる。学校へ行く子供たちにとっては、長い夏休みが終わり、新学年の始まりを知らせる祝日でもあるのだ。
小学校を卒業し、中学生になる直前の夏休みに、遊び仲間四人で隣町にあると噂される死体探しに出かけるという映画がある。原作はホラー小説家スティーブン・キングの『死体』(The Body)。この小説がロブ・ライナー監督の手にかかると『スタンド・バイ・ミー』という映画になる。1959年のオレゴン州の小さな町を舞台に、旅を通して成長する少年たちの姿が生き生きと描かれている。今は亡きリバー・フェニックスが、リーダーのクリス役を熱演していた。この旅の話を語るのは、成人して作家になったゴーディである。死体探しの経験を小説にしながら、最後の一文を「十二歳のときのような友達は二度とできない」と結ぶ。
後日談で、思い出す映画がある。ニューヨーク州で紹介した『スリーパーズ』である。やはり四人の少年が主人公で、小さないたずらが運命を変え、劇的な物語が展開する。後にジャーナリストになった少年の回想というかたちで進む秀作であった。
『スタンド・バイ・ミー』では「一晩歩いて町に戻ったのは日曜日の朝五時。レーバー・デーの前日だった」と淡々と事実を伝えながら、二日間の旅での心の成長を確認していた。夏が終わり、秋がきたのだ。
(P120「夏のコラム」より抜粋)
春夏秋冬の各部ごとに、季節の行事や記念日についてのコラムが書かれ、コラムの中にも、映画に見ることのできる各テーマに関するシーンやエピソードが盛り込まれています。

本文では、注記すべき事柄や、登場する映画の簡単な解説やビデオジャケット写真を下段に配して、わかりやすく読みやすく見せています。

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岩本裕子 いわもとひろこ
1977年、津田塾大学(アメリカ研究)卒業後9年目に立教大学大学院(西洋史専攻)へ進学。2006年、同大学院で博士(比較文明学)学位取得。現在、浦和大学こども学部教授。著書は『アメリカ黒人女性の歴史』(明石書店)他、共著に『アメリカフェミニズムのパイオニアたち』(彩流社)など多数。

主な著作
『アメリカ黒人女性の歴史』(明石図書)
『アメリカ研究とジェンダー』(共著、世界思想社)
『スクリーンに見る黒人女性』(メタ・ブレーン)
『スクリーンに投影されるアメリカ』(メタ・ブレーン)
『語り継ぐ黒人女性』(メタ・ブレーン)

review

JTB情報誌『YES』書評欄掲載(1999年11月号)
これまで7大学で「米国史」を講義し現在も教壇に立つ著者が、歴史嫌いの学生を「歴史を学ぶことが大切だとわかる映画好き」にするためのテキストとして、アメリカ200年の歴史をいわば“映画地誌”の趣で構成したものである。
合衆国50州を春夏秋冬の季節を追いながら巡り、そこに220の映画を狂言まわしに登場させている。歴史と映画という本来なら相容れない虚実を結びつけ、著者なりの合衆国像をつくりあげようとした意欲作だ。建国の歴史ゆかりの東海岸、イギリス人最初の植民地ヴァージニア州から始まる。ディズニーのアニメ「ポカホンタス」で、入植者と先住民の確執の背景を描き出すところに歴史家の目がある。最後のワシントンDCまでの旅は、米国地図を座右に読み進むことをおすすめする。アメリカについては未知の向きにも、一読してこの国の歴史の全体像が見えてくる。

スクリーンの中でアメリカ旅行をどうぞ(旅のネタ本・アメリカ編(国際地学学会)掲載)
200本以上の映画、あの場面、この場面に注目。映画を案内役に、いざ全米散策! アメリカ史を教える先生が、学生に喜ばれた実績をもとに書いた本だから、単なる映画の舞台紹介といった単純なものではない。映画のさまざまなシーンをネタに、全米各地の歴史的&文化的プロフィールを教えてくれるという、画期的な展開だ。エイズをテーマにした『フィラデルフィア』の舞台がなぜこの町でなければならなかったのか?『スタンド・バイ・ミー』の男の子たちが旅から帰ってきた日は?『ダイ・ハード3』で犯人の出してきたクイズのヒント「42のうちの21」は、合衆国史の基本なのだ…などなど、「ナルホド!」納得のお話ばかり。映画のシーンの中の、乗客の読んでいた新聞の見出しやら、テレビで流れているアナウンスやら、ちらっと映る看板までとりあげていて、もう一度観るときの要チェックポイントがいっぱいである。

『白鯨』『若草物語』から『カラーパープル』『マルコムX』まで
(マリ・クレール・1999年5月号掲載)
あらゆるアメリカ映画の舞台となった全50州の各地を案内。社会性、娯楽性を問わずスクリーンに表現された喜び、苦悩からは建国200年余の過去と未来が交錯することを知る。

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